2002.10.04 ヨコヅナサシガメ  E5000
虫撮り散策の相棒だった愛犬が死んでから1週間。 長らく休んでいた散策をようやく再開した。 愛犬を埋葬した裏山のクヌギに、今年孵化したヨコヅナサシガメの幼虫が群れている。 今は何度目かの脱皮の時期で、写真のように真っ赤な体が目を引く。 次第に黒くなるので、この姿を見ることができるのは僅かな時間だけだ。 一瞬の変化を象徴するような赤く透明な体は、なんとも神秘的で美しい。 このヨコヅナサシガメの幼虫達は、ここで冬を越して、春を迎えると最後の脱皮をして成虫となる。 そして産卵した後 いのち終ってゆく。 その亡き骸はクヌギの周囲の微生物、そして植物の いのち となり、そこに集まってくる小昆虫はヨコヅナサシガメの子供達の餌となる。 こうして いのち の循環は、気の遠くなるような永い時間、繰り返されてきたのだ。 側に埋めた愛犬もまた、多くの いのち を育んでゆくのだろう。 私達は「生きる、死ぬ」ということで大騒ぎする日暮らしをしているが、それは いのち の循環の一側面にすぎず、実際には 生 とか 死 を超えた、大きな大きな いのち の営みの中で、今ここに私たらしめられているのではなかろうか・・・そんなことを考えながら、懸命に いのち を繋いでゆこうとしているヨコヅナサシガメを見ていたら、赤く透き通ったその姿が この上なく美しく、尊く見えてきて、なんだか胸がいっぱいになった。
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